AOI Film Craft Lab.では、参加型のイベントが多数開催されています。8月27日には『カメラを止めるな』を監督された上田慎一郎さんをお招きし、AOI Lab.ショートフィルムフェスティバルを開催。前日の8月26日には、現在公開中の『川っぺりムコリッタ』で撮影監督をつとめる安藤広樹さんによる写真のワークショップが開講されました。
今回は、アオイラボを積極的に活用して、次々と作品を発表されているぐっぴぃ(@ぐっぴぃ )さんにインタビュー。制作する中で感じた意識の変化などについてうかがいました。

ぐっぴぃ
神奈川県出身。青山学院大学2年生。
AOI Lab.ショートフィルムフェスティバルで短篇作品を初監督。


初監督作品を上田慎一郎さんに観てもらう経験


——AOI Lab.ショートフィルムフェスティバル、オンラインで観覧していました。ぐっぴぃさんの作品、とても印象に残っています。埋まらない穴、消えない傷という感覚はとてもわかりますし「怒り」というテーマに真摯に向き合われたのだなと感じました。「怒り」はこういうものですよって提示するのではなくて、内に抱える「怒り」について問いを投げかけてくれるような作品だったと思います。

ぐっぴぃ:ああ、伝わっていてすごく嬉しいです。今回、発表する前にも、いろんな人に見てもらったんですけど、やっぱりピンとこないという方もいて。テーマがテーマだけに、わからないという方もいらっしゃいました。全員にわかってほしいけれど、説明してしまうのはちがうし、バランスが難しかったですね。

ぐっぴぃさんが初監督されたショートフィルム「埋まらない穴」。

——今回初監督作品ということですが、どうやって発想されたんですか。

ぐっぴぃ:テーマである「怒り」について、そもそも考えたことがなかったので、とにかく、怒りを扱う小説や映画に触れて、思考や感覚を広げることから始めました。安直かもしれませんけど、最初はそういう方法しか浮かばなかったんです。怒りってどんなものがあるかな、って。

——どんな作品に触れられたんですか。

ぐっぴぃ:いろいろですね。『怒り』そのものがタイトルになっている李相日監督の映画も観ました。あとわたしは、村上春樹さんの本が好きなんですけど、登場人物が奥底に怒りを抱えているように感じるんです。瞬間的な怒りではなくて、消えない怒り。抱え込んで生きていかなければいけないような……そういう方向の「怒り」もありますよね。
そこから、自分は「怒り」についてどう表現したいんだろう、って考えながら脚本を書いていきました

——村上春樹さん、わたしも好きなんです。雰囲気がお好きなの、作品からなんとなく伝わります。キャストや場所の手配もご自分でやられたんでしょうか。

ぐっぴぃ:そうですね。「この人にやってほしいな」という人に声をかけてお願いしました。

アオイラボの講座をフル活用


——参加のきっかけはありましたか。

ぐっぴぃ:とにかく、なにか行動しなければ、と思っていたところだったんです。募集がかかったときすぐ申し込みました。初めてつくった作品を上田さんを観ていただけるなんて、これ以上ないスタートだったと思っています。

——実際にイベントに参加してみてどうでしたか。   

ぐっぴぃ:自分の出番の1人前までは全然大丈夫だったんですけど、なんかいざ自分の番になったら、もう緊張しすぎて、真っ白になっちゃっいましたね(笑)。

——初監督作品を、上田慎一郎監督に観てもらうわけですから……緊張しますよね。

ぐっぴぃ:でも、自分の意見を聞いてもらえるがあるってすごく有難かったです。自分だけでは気づけなかったことがたくさんありました。

——その「気づけなかったところ」を具体的にうかがってもいいですか。

ぐっぴぃ:まずは、アングルの話ですね。誰を主役に立てたいかで、構図を変えた方がいいというのは、その通りだなと思いました。あとは、言いすぎないで画で伝えること。バランスや加減は難しいなと思いました。

——印象に残ったことはありますか。

ぐっぴぃ:上田慎一郎さんのショートフィルムフェスティバルの翌日に、安藤広樹さんの写真のワークショップ「日常の写真から作品をつくる」にも参加したんです。
上田さんのイベントでも安藤さんのイベントでも、実はこういうことを想定していたとか、こういうことが伝えたかったとか、自分の試みを説明させてもらう機会がありました。
プロには、そんな機会ってなかなかないじゃないですか。プロの作品は、言葉で語らなくても作品だけで伝わる。それがやっぱり、プロとの違いなんだなって感じました。

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ぐっぴぃさんが「写ルンです」で撮影された作品。


——イベントやワークショップに参加する中で、意識は変わりましたか。

ぐっぴぃ:積極的に参加しはじめたのは今年の夏頃からなんですが、自信がなくても、どんどん制作しないといけないなって感じています。イベントをきっかけにして、とにかくつくって完成させて、つくって完成させて……それが一番大切だと思いますね。
そもそもつくらなかったら、上田さんに観てもらうことなんてできなかった。感想や意見をいただくこともできなかった。だから、自分で「ダメだな」ってわかっていても、とにかくやる。つくる。つくり続けることが必要だなと思いました。

合唱から、映像へ


——今大学生ということですけれど、この先の進路は考えていますか。

ぐっぴぃ:表現をする仕事につきたいんです。映像ディレクターになりたい。
制作会社とか、どなたかのアシスタントになるとか、具体的には色々あると思いますけど、とにかく今は、スキルアップして、仕事を広げていけたらな、と思っています。
アオイラボのつながりで、撮影現場の案件にも行かせていただきました。やっぱなんか大変な部分が多いけど、それでも楽しいなって思いました。出来上がったものだけを見てたら分からないことがあるなって思います。経験を積んで、自分なりの表現をかためていけたらと思っています。

——表現をする仕事がしたい、と思ったきっかけがあれば教えてください。

ぐっぴぃ:高校で合唱部に入っていたんですが、顧問の先生が結構有名な方で、ニューヨークに連れて行ってくださったり、有名なミュージシャンとコラボをしたりする機会をくださったりしたんですよ。だから、表現する仕事ってすごいな、自分も何らかのクリエイティブを仕事にして生きていけたらなって、ずっと感じていました。

——合唱と映像だと、自分でパフォーマンスをする側と、役者の方にパフォーマンスをしてもらう側という違いがあるようにも感じるんですが、ぐっぴぃさんの中で違いはありますか。

ぐっぴぃ:自分の中では、表現する、伝える、という点で、すべて一緒なんです。
たとえば、わたしは動画も好きですけど、安藤さんのワークショップに出たように、写真も好きですね。どういう形で表現を出力するかが違うだけなんです。

——なるほど。すべて地続きなんですね。表現活動において、今挑戦したいことがあれば教えてください。

ぐっぴぃ:正直、今だいぶ焦ってはいるんです。何かつくらなきゃ、もっと行動しなきゃって。だから、とにかく作品をつくります。ひとまず今年は、あと3本は撮りたいです。コンテストにも応募したい。
映像をつくることに憧れたきっかけが欅坂46のMVだったので、MVも撮りたいです。
自分は表現を通して何を伝えられるんだろうって、模索していきます。

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「作品を仕上げて人にみせる」というのは、莫大なエネルギーと勇気を要する作業です。きちんと仕上げられるか、発表できるかできないかには、高いハードルがあります。そのハードルを行動力でとび越え、表現に向き合い、自分の世界を構築されているぐっぴぃさん。ぐっぴぃさんのこれからの表現活動がとても楽しみです!

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